実はCilieさん、2年ほど前に左前足の指に悪性腫瘍ができて、切除手術をしたんです。
ほら。

そんでもってあっという間に転移して、余命3ヶ月を宣告されたんです。
でもね、無事に9歳を迎えて今も元気にしているんです。そのことを詳しく書いてみたいと思います。
【発見から手術まで】
最初の異変は爪の先端にできた縦の亀裂で、そこから少し出血していました。亀裂はどんどん伸びて爪の付け根にまで達し、4、5日後には完全に2つに割れて中の肉が見えるほどになりました。
病院では安静にして様子をみましょうと言われていたのですが、全く歩かせないわけにもいかず、歩けば爪が刺激されて亀裂がひどくなるだけだと思い、ぽっぽママさんにお願いして付け根近くまで切ってもらいました。(ヘタレなワタクシ、自分ではどうしても切れませんでした・苦)
その後数日間は落ち着いていたものの、今度は指が腫れてきて、爪を切った跡からの出血が止まらなくなりました。最初に亀裂を見つけてからずっと抗生物質を飲み続けていたことを考えると、これはどう考えてもおかしい。絶対におかしい。
嫌な予感がよぎり、腫瘍科のドクターに診てもらったところ、「爪下悪性黒色腫(メラノーマ)」だろうとのことでした。(確定診断は組織検査の後に出されました。)
黒色腫については検索すればいくらでも情報が出てきますのでここでは触れませんが、要するに明るい希望があまり持てない進行が速く転移しやすい悪性腫瘍。
そんな病気に我が家に来て1年足らずのCilieが罹ってしまった。
最初の出血から約2週間でこんなになってしまいました。写真はクリックすると拡大します。グロいので要注意。

爪を切った跡から肉が盛り上がっています。
そしてその翌朝。

爪の上からも出てきました。
その夜にはさらに飛び出してきました。

たった1日でこんなに変化するなんて。
この1分、1秒の間にも進行しているのかと思うとただただ恐ろしく、組織検査で病名が確定するのを待っていられるわけもなく、最短で手術の予定を入れてもらいました。
指の根元からの切除になりました。

切除部分の検査の結果、根元までの浸潤は認められなかったとのことで一安心。
【術後の治療】
結果から言うと、特に何もしませんでした。
Cilieの場合、骨の先端が溶け始めており、異型性が強く通常よりも転移の可能性も高いことが分かりました。当然のように抗がん治療を勧められましたが、結局断りました。
それから1ヶ月半後、首のリンパ節に転移が見つかりました。何もしなければ余命は3ヶ月、半年もつことはないだろうと言われました。再度抗がん治療を勧められ、そして再度断りました。
がん細胞から出るCOX-2酵素を阻害する抗炎症薬に抑制効果があると聞いて、その薬だけは飲ませることにしました。
【食事と生活の改善】
がん細胞は炭水化物をエサにするという記述を見つけ、フードを穀物不使用のものに変えました。ペットの栄養管理ができるお友達に免疫力アップのためハーブを教えてもらい、フードに混ぜました。
免疫力はストレスを感じるだけで下がってしまうため、Cilieが嫌がること(人間の都合につき合わせたり留守番させたりすること)は最小限にしました。
とにかくベッタベタに甘えさせ、ワガママ生活をさせることに徹しました。
参考までに当時から今も続けているハーブなどなど。
ネトル、オレガノ、レッドクローバー、フラックスシードオイル、D-フラクション、粉末シイタケ、マイタケ、玄米(これは炭水化物ですがβグルカンを含んでいるので)。
日本では高価だったりオーガニック品が手に入らなかったりするものはアメリカから個人輸入しています。手術直後はこの他にも勧められたりいただいたりしたサプリを飲ませていました。
余談ですが、この食事内容に変えたところ、ずっと消化器系が弱くて5歳になるまで1日3食にしていたAlexが2食にしても下痢をしなくなりました。
【転移のその後】
転移は首のリンパ節で場所も悪く、大きくなるにつれて食べることに支障が出てくるだろうと言われました。転移箇所の手術は簡単で日帰りできるとのことで、食べる楽しみを奪わないためにも受けるつもりでいました。
そしてどんどん大きくなって、最大で2cmほど、私が触っても分かるほどのしこりになりました。Cilieの元気もなくなり、食事も摂らず散歩にも行きたがらない、そんな日が続いていました。
ところがその後しばらくして、なぜかCilieは少しずつ元気になっていきました。食べる量が元に戻り、散歩でもよく歩くようになりました。これが本当に余命3ヶ月を刻んでいるのかと思うほどの元気さでした。
転移が見つかってから2ヶ月半が経った頃、定期検診で「しこりが小さくなっています。他臓器への転移も全く見られません。」と言われました。
そして信じられないことですが、しこりは少しずつ少しずつ小さくなっていき、
半年後には「もう触っても分からなくなりましたね。もちろん他の臓器も綺麗です。」
1年後には「投薬は止めてもいいかもしれませんね」
2年後には「治ったと判断して良いのではないでしょうか」と言われました。
【いろいろ聞いた話】
定期健診の度に小さくなっていくしこりを触りながら、ドクターも首を傾げていました。そしてついに触診で確認できなくなった時、「これはね、本当に本当にすごいことなんですよ」と。
薬が効いたのかCilieの自己免疫力が勝ったのか、その両方なのか。
メラノーマは他のがんに比べて自己免疫力による縮小効果が大きく、欧米では免疫力を上げるワクチン治療が抗がん治療と並行して行われているそうです。
もし自己免疫力でがんに打ち勝ったのであれば、今後再発の心配はないでしょう、とも言われました。
がん治癒の目安として、5年、10年生存率というのがありますが、犬の場合は1年生存で人間の5年、2年生存で10年とみてよいのだそうです。
そしてこの夏、Cilieは無事に2年目を迎えました。
【どうして抗がん治療をしなかったのか】
ここから先は批判覚悟です。こんな話をあえてする必要があるのか、とも思いますが、CilieとAlexがそれぞれシニア、中年世代を迎えた今、病気やいつかやってくるその日のことを私達がどう考えているのか、そんな覚悟を書いています。
同じような経験をされた方、私達とは別の選択をされた方は気分を害するかもしれません。
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抗がん治療を断った時、ドクターに「もっと長く一緒にいたくないですか?」と聞かれました。
バカバカしいったらありゃしない。そんなの愚問です。1日でも1秒でも長くいたいに決まっています。
でも、その治療は何のため?誰のため?
少なくともCilieのためではない。もしも犬が口をきけたなら、「治療する?」という問いになんと答えるのか。正直、これは私には分かりません。
でも、もしも抗がん治療をしたとしたら?これは分かります。Cilieは絶対にこう言います。
「おかあちゃん、やめて」と。
犬は自ら長生きしたいと望んでいるわけではありません。一瞬一瞬をつなげて嬉しい、楽しい、悲しいと感じて(生きて)いるだけ。
あと何回「おはよう」が言えるかなんて、人間の勝手な妄想だと思っています。
余命を宣告された。命の期限を切られた。
カウントダウンは始まったのです。例えば10カウントが20、100まで伸びたところでそれが何だというのか。
Cilieは病院が嫌いです。一人取り残されるのが嫌いです。痛い思いをするのが嫌いです。
何の確約もない未来の数日、数週間、数ヶ月のために、今のこの一瞬を台無しにしたくない。
Alexに辛い闘病生活を強い、Nicolaを入院先で一人逝かせてしまった私達にとって、抗がん治療の選択などできる訳がありませんでした。
そして病気が進行し、ただ息をするためだけに苦痛に耐えなければならない時が来たら、それを止めるのは私達の役目だと考えていました。
全てを覚悟して過ごした数ヶ月、まさかこんな日が来るとは夢にも思っていませんでした。
Alexの乳び胸の闘病生活をブログに書いていた時にあまり良い思いをしなかったこともあり、Cilieのメラノーマのことはずっと伏せていました。ぶっちゃけ、「その時」が来た後にでも書くつもりでいました。
しかしながら、ブログのアクセス解析を見ていると、病名のキーワード検索でアクセスしてくれる方が毎日のようにいます。「乳び胸」という珍しい病気なのにも関わらず、です。
メラノーマなら情報を探している方はもっともっと多いはず。Cilieのケースはレアケースであり、参考になるような話ではありません。でも、それでもこんなこともあるんだという事実を知っていただけたらと思っています。